映像学科Department of Film and Media

[最優秀賞]
柏倉琉生|疑念
山形県出身
山本コージゼミ
1365×910 写真

新型感染症が流行し、我々が実際に体験してきたマスク越しやパーテーション越しでの対話は、何かに隠れた状態のものでした。そういった状態での対話や鑑賞をすることが、どれだけ理想や固定観念に囚われているのかを、この写真を通して伝えることができたらと思っています。



山本コージ 教授 評
柏倉琉生の写真は「真実」を創り出している。「事実」はただひとつ。アクリル板をありきたりな風景の中に置いているだけ。鑑賞する人の数だけ感じる「真実」を創り出しているのだ。長時間露光というアナログな写真技術を使って、観る人に錯覚や思い込みを巧みに誘導する、一見静かな写真だが、1枚1枚から問いかけられる不思議な感覚になる写真なのだ。
おいおい試されてるのか私は?とつい呟いてしまう。
タイトルにそれは表れている。「疑念」とはなんと直接的な表題であろうか。タイトルからして鑑賞者に勝負を挑んでいる。その裏にはコロナ禍でアクリルという素材が日常に溢れ、閉塞感の象徴としてのアクリルをあえて未来に対しての「希望の扉」に見立て、鑑賞者に「真実」を問いかけている。
4月から実験的アプローチを模索し、愚直なまでのアナログな写真技法にこだわり、プロトタイプを6月に山形市内で展示した。鑑賞者に「疑念」は生まれるのか?を検証するためである。卒業制作期間トライ&エラーを繰り返し、完成したこれらの7作品。卒業制作最優秀賞にふさわしい教授陣満場一致の大作である。社会に出てもトライ&エラーを繰り返し新しい実りを生み出してもらいたい。