[優秀賞]
春名真歩|hole
岡山県出身
木原正徳ゼミ
キャンバス、油絵具
空気を描きたいと考えている。しかし空気は目には見えない。だから具体的なモノの形を借りることにした。hole(穴)は空気を表現するのに一番適した構造を持っていると直感的に考えた。だから今回の作品では全て「穴」を描いている。
木原正徳 教授 評
彼女の制作空間は凄まじい。?
大量の絵の具や油の堆積でヘドロ化した防汚シートの上に、夥しい数のドローイングと描きかけのキャンバス群。その中に埋もれるようにして画面と格闘する絵の具まみれの小さな姿。「空間とは何か?」「モノの存在とは何か?」「絵を描くとは何か?」半世紀も前の画学生を前にしているかのような、そんな気持ちになる。?
「穴」をテーマにさまざまな角度から、全く妥協することなく空間の追求を試みた。どこまで行っても筆の置き所(完成)は見当たらず、描いては消しての繰り返し。答えが見つからないが故に作品の枚数も自ずと増えていく。毎日決まって朝の8時にはアトリエに入り、ただひたすら画面に向き合うその姿は、まさに修行僧のようであった。?
混沌の制作空間から抜け出て、今真っ白な壁面に整然と並ぶ作品群は、彼女にいったい何を伝えたろうか。?
天才肌の彼女のその真価を確認するために、10年後、20年後の作品を是非見てみたいと切に思う。彼女にとって真の制作は今始まったばかりである。?