[優秀賞]
鈴木藤成|藤成
山形県出身
三瀬夏之介ゼミ
2440×4000 和紙、岩絵具、水干絵具、水彩絵具、アクリル絵具
浜田廣介作の児童文学である「泣いた赤鬼」をご存知でしょうか。私の作品は「泣いた赤鬼」の物語構造に、作者である“私”と“現代日本社会”を当てはめています。物語に出てくる登場人物と作品に描かれたモチーフに鑑賞者が自らを投影し作品を観て、そして読んでくださることを願います。
三瀬夏之介 教授 評
鈴木は彼自身の名前である「藤成」と卒業制作を名付けた。それは自己愛にまみれた芸術家のナルシシズムからつけられたものではけっしてない。彼の実家は代々地元の神社の管理を請け負うことを定めとしてきた。そのことは彼の名前の一字に深く受け継がれ刻み込まれている。ただ、そこはもう年々人が減り続ける過疎地域の忘れられた場所である。彼は村人の無責任さを嘆きつつも、果たして自分はその場所を本気で引き受ける勇気を持てるのかと深く自問自答する。
山形で生まれた童話「泣いた赤鬼 」における利他性の象徴である青鬼に自身を重ねつつも、自身の欲求に従いたい赤鬼的態度にも行き来きしてしまう姿は、画面上の赤とも青ともつかない鬼としてのアーティスト像と重なる。逡巡し、描き続けることによって、鈴木は、はじめて、藤に、成る。