松本萌絵|沈没船の保存公開方法の検討
北海道出身
村上智見ゼミ
水中遺跡は、湖や海に普遍的に存在する、豊かで生き生きとした歴史的財産である。これらの水中遺跡に関心が向けられるようになってから久しいが、研究としては十分な蓄積があるとはいいがたい。水中遺跡とは、川や海の底に沈んでいる遺跡や船のことを指し、様々な種類があるが、沈没した船も多く含まれている。こうした沈没船を対象にしたスキューバダイビングでは、遺跡を傷つけることなく見学できるだけでなく、遺跡の歴史を学ぶこともできるため、世界中で人気を博している。筆者は水中遺跡のうち沈没船に興味を持ちスキューバダイビングの資格を取得したのだが、ダイビングスポットの沈没船について学ぶ中で、沈没船を含め水中の遺跡に触れてはいけないことは、ダイバーにとって周知の状態にあることを知った。そのような中で、筆者はダイビング中に観光客が珊瑚と接触し、その一部が破壊される様子を見た。この出来事をきっかけに、水中遺跡にとって最適な保存?公開方法を調査する必要があると考えた。
沈没船の保存公開方法は、①博物館での展示を伴わず沈没船についての展示やレクチャーを行う、②スキューバダイビングによる見学、③グラスボトムボートによる見学、④スキューバダイビングとグラスボトムボートを併用した見学、⑤海底遺跡等の調査の現地説明会、⑥潜水艦による見学、⑦デジタルアーカイブ公開に大別できると考えた。本研究では日本国内を中心に沈没船の見せ方について調査を実施し、今後の保存公開方法の可能性を考察し、整理する。特に、適切に保存しながら公開できる方法の提案につなげたい。
調査の結果、「グラスボトムボートによる見学と海底遺跡等の現地説明会を併用する方法」が最適ではないかと考えたが、断定することは難しいと判断した。歴史的価値を持つ沈没船の公開において、課題の解決が困難であるように思われた。保存の重要性や遺産の意味を理解してもらうためには、観光目的のスキューバダイビングではなく、レジャー学習としてのスキューバダイビングが良いのではないかと推察する。本研究では、先行研究や関連する文献において、メリットとデメリットについて述べた例が少なく、それらの比較例が全くないとされたため、すべて手探りの状態で調査を行った。今回の調査研究から得たデータを参考に、各保存公開方法を調査するフォーマットを準備した状態で行い、より正確な分析をすることを今後の課題とする。
1. 開陽丸記念館
2. 人為的に穴をあけた沈没船(不動丸)
3. グラスボトムボートの水面下展望室