今野里穂|表装裂の伸縮特性ー掛軸仕立てにおける種類別検討ー
宮城県出身
杉山恵助ゼミ
絵画や書を紙や裂地、糊を使って掛軸や巻物、屛風などに仕立てることを表装または表具といい、表装?表具に用いられる織物は表装裂、または表具裂と呼ばれる(図1)。素材や織り方によって様々な種類がある表装裂は、技術者の経験則に基づいた様々な調整を経て用いられる。その一つとして、水で湿りを入れる水引きや糊を塗布して和紙を貼り付ける裏打ちを行うことで、種類によって異なる伸縮が生じた表装裂のバランスをとり、一つの掛軸として仕立てている。本研究では、文献調査及び聞き取り調査から、表装裂の基礎情報について知ること、また、水で湿りを入れる実験から、伸び縮みの動き方である伸縮挙動について、表装裂の種類による特性を明らかにすることを目的とした。
実験試料は、箔糸が使用されている金襴類?箔糸が使用されていない柄物の緞子類?無地類に分けた。素材は天然繊維である正絹、綿、紙と、化学繊維に分類した。また、表面観察によって、経糸と緯糸の組み合わせ方の種類である平組織?綾組織(図2)?繻子組織(図3)に分類した。試験片の大きさは100㎜×100㎜とし、湿りの入れ方は含水率60%となるように調整した場合と、掛軸の仕立てで行われる水引きを想定した、全体を十分に湿らせる場合に分けて行った。
結果、全体的に緯糸方向よりも経糸方向の伸縮挙動が大きいことが分かった。経糸の伸縮を種類別にみると、緞子、金襴、無地の順で伸縮挙動が大きいことが分かった。素材別では正絹に比べて化学繊維や綿の伸縮挙動が大きいこと、また、同じ織組織でも経糸や緯糸、表装裂の種類によって伸縮特性が異なることが分かった。以上から、表装裂の伸縮挙動は素材や織組織が影響を及ぼしており、その他にも伸縮挙動の要因となるものがあると考察できる。しかし、今回の実験では、試料の質量や厚さ、糸の太さなどが異なっており、正確な比較を行うことはできなかった。今後は、糸の撚りの数値化や、同条件の素材や密度などの試料とより多く比較することで、表装裂の伸縮に影響を及ぼす要因を明確化することが求められる。
1. 様々な種類がある表装裂
2. 地組織が綾組織の金襴
3. 地組織が繻子組織の緞子