文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

石垣夏樹|ガラス絵における絵具の固着性ついて ?幕末から明治期に使?された絵具の?較?
宮城県出身
中右恵理子ゼミ

 ガラス絵とは、透明で平滑なガラス板に不透明絵具を?いて描く絵画であり、ガラス板の??に描き、裏?からガラスを透かして鑑賞する。ガラス絵の起源は西洋にあり、中世ヨーロッパの宗教画として描かれたとされている。日本には、オランダや中国の商人を通じて長崎へ伝来し、そこから次第に国内で普及していったと考えられる。幕末から明治期にかけて通俗化したが、明治30年頃になると、急速に衰退した。先行研究では、ガラス絵で使?される絵具は多くのレシピや溶液が使?され、その顔料や展?剤の混合が保存や修復に多くの課題をもたらすことが述べられている。また、ガラス絵は平滑なガラス板が使?されるため、ガラス板と絵具の固着強度が絵具層の?裂や剥落に影響することが考えられる。したがって、本研究では、幕末から明治期にガラス絵に使用されていたと考えられる絵具を文献調査をもとに再現し、サンプルを作成した。そして固着性の調査のため、クロスカット試験と鉛筆硬度試験を実施し、これらの結果を通して絵具とガラスの固着性と?裂や剥落の関係を明らかにすることを?的とした。
 実験では、計6つの絵具を作成した。油絵具は日本独自の処方として、高森観好にみる司馬江漢の処方と荏油のみの処方を作成し、西洋の処方としては佐?曙?『画図理解』に基づく処方とサンシックンドポピーオイルのみの処方の4つを作成した。さらに泥絵具として、胡粉と白土を用いた2つの処方を作成した。それらを用いたサンプルを作成し、固着性の調査のため、クロスカット試験と鉛筆硬度試験を行った。
 実験の結果、油絵具よりも泥絵具の固着力が高く、胡粉を用いた泥絵具が最も高い固着力を示した。事前の文献調査では、「?性の絵具は定着?が弱いため、最終的に油絵具が?いたと考えられる」とあったため、この結果は予想外であった。また、油絵具と泥絵具では明確な違いが見られた(図1、図2)。この違いは塗膜の特性によるもので、油絵具はフィルム状に固まり、泥絵具は粒子状に固まるという特性が、結果に大きく影響したことが考えられる。今回は、絵具が乾燥した時点での固着状態を調査したため、経年劣化による損傷との関係を考察するには、情報が不十分であった。そのため、幕末や明治期に制作されたガラス絵作品の経年劣化を想定した実験を行うことで、異なる結果が得られ、固着性との関係性を明らかにできるのではないかと考える。

1. クロスカット試験結果(油絵具)

2. クロスカット試験結果(泥絵具)