後藤智也|民俗芸能の文化財指定をめぐる活動と伝承組織-山形県飽海郡遊佐町の番楽?杉沢比山の事例より-
山形県出身
松田俊介ゼミ
目 次 はじめに/研究対象の概要/民俗芸能と文化財保護制度/全国神楽継承?振興協議会/現地調査/考察?結論/おわりに
本研究は、山形県飽海郡遊佐町の杉沢比山を対象とし、文化財指定をめぐって行われた活動の経緯を追跡することで、さまざまな立場の伝承組織が民俗芸能に果たす役割と、その影響について考察するものである【図1】。
筆者は、鳥海山修験を背景とする番楽?杉沢比山を対象に、さまざまな立場の人々(比山連中、教育委員会等)に取材してきたが、そのなかで、当事者たちの間に、無形文化遺産登録における温度差が窺えた。本研究においてはこのような文化財をめぐる諸事情をあきらかにすることで、地域住民や伝承組織にとって杉沢比山がどう受け入れられ、今後どのように扱っていくべきと考えられているのか(観光利用、教育、拡大/縮小等)を追究する。
杉沢比山の無形文化遺産登録は、文化財のグルーピングと関連しているものであった。文化財のグルーピングとは、類似する文化財を一つのカテゴリとしてまとめ、そのカテゴリとしてユネスコへ提案するものである(ex.「ナマハゲ」や「甑島のトシドン」といった行事を「来訪神行事」としてまとめて提案する)。現在、杉沢比山もユネスコ無形文化遺産登録の可能性が示唆されているが、これは宮崎県を中心とし、「神楽」の無形文化遺産登録を目指す「全国神楽継承?振興協議会」という団体に加盟したことに起因している【図2】。
伝承組織の声としては、杉沢比山が無形文化遺産へ登録されることに関して慎重?消極的な意見が多く、その背景としては杉沢比山が地域の祭事の場としての側面を有していることや、先立って登録された「遊佐の小正月行事」?アマハゲが杉沢比山と同様、神事としての側面等から観光への活用があまりなされなかったということが挙げられる。一方で、グルーピングによって全国の保存団体と繋がりができる、無形文化遺産登録の話題性が地域の学びなおしに繋がる、といった意見もある。せめぎ合いの渦中であるが、杉沢比山の伝承組織における、無形文化遺産登録についての当事者間の話し合いは、彼らの文化の問い直しにつながる点で注視すべき事項である。
1. 杉沢比山の伝承組織間の関係図【図1】
2. ネットワーク形成のフロー【図2】
3. 現地公演時の杉沢熊野神社境内