美術科 版画コースDepartment of Fine Arts Printmaking

[優秀賞]
太田菜月|①オレンジ色の思い出 ②蒼穹 ③手のひらの夏 ④波音とともに笑う ⑤揺蕩う ⑥朝焼けの散歩道 ⑦遥か彼方まで ⑧黄昏の教室
木版画


結城泰介 専任講師 評
 街や海などを背景にした女子生徒達の姿と数々のシーン。これらは全て作者の心に残る大切な思い出の場面であると言う。太田菜月は数ある版画技法の中から水性木版画を選択し研鑽を積んできた。特に摺りに苦労した。 絵の具の乗せ加減やバレンでの力の入れ具合、和紙の選択とその湿し、一朝一夕では成らず、数多くの失敗を経験しここに辿り着いた。色面やグラデーションは四年間の彼女の弛まぬ努力の結果なのである。
 思い出は時間の経過と共に遠ざかるが、遠くなればなるほどかえって美しいものへと変容する。丹念に彫り起こされた形が色彩を伴い摺り重ねられて行く工程は、遠ざかる淡い記憶を一歩一歩手繰り寄せる行為であり、伝統的な木版技法の効果と相まって淡い光を帯びている。私はこのプロセスで紙上に表された思い出の世界に聖性を感じている。
 近年、アニメーション的表現と伝統木版がコラボレーションして新しい展開を見せている。太田も「現代の浮世絵師」となるべく更なる高みを目指して作品を作り続けて欲しい。