建築?環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
渡邊咲来|植物形態学的建築
福島県出身
佐藤充ゼミ

建築とは人と人の間の背景である。人は情報の集積であり常に変化する生き物だ。人の生きる背景として、自分事でも他人事でもない現象的な建築が存在することで、存在することがごく自然に許されるように感じた。これは、人の事情と無関係に作られた建築である。植物は美しい、それは脳を介さず、環境に対して素直な姿へ変化を遂げた結果である。私にとって建築は風景としてとらえられた。人が生きるための機能が満たされた今、?の事情と無関係に作られた「植物形態学的建築」が、風景価値を持ち存在し得るのではないだろうか。建築に「素直さ」を付与したさき、それは人々の心に残る美しい存在になるだろう。本研究では、美しい建築を作ることを?的に植物形態学的建築を思考していく。


佐藤充 准教授 評
クライアントが不在で、実際に建つことのない建築を一年掛けて心血を注ぎ設計する卒業設計の意義とは何だろう。そのひとつに、建たないが故の、建築概念の拡張が挙げられる。近代以降続く、機能主義に対し、渡邊は、特定の機能がなく、美しく、風景の一部となり、全ての生物にとって受け入れられる空間を「植物的建築」と定義し、機能主義の先にある建築の姿を思考した。導き出された建築は、床、壁、天井で構成されたステレオタイプとは一線を画し、さまざまな形状の鋼線が群を成す。それらは、20科の植物をサンプリングし、植物の成長過程や形態的特徴から生成された「植物的建築群」である。現代の建築概念で本作品を俯瞰すると、これは果たして建築なのかという疑問が生じるが、覗き込むと確かにそこに植物的空間が建ち現れる。本作品は、「植物的建築」の生成を通して建築概念の拡張に挑んだ思考実験であり、これからも渡邊の思考は続く。